七十二候(しちじゅうにこう)は、二十四節気をさらに三つに分けた細かな季節の移ろいを表す暦です。小寒には「芹乃栄(せりすなわちさかう)」「水泉動(しみずあたたかをふくむ))」「雉始雊(きじはじめてなく)」の三候があり、厳寒の中にも生命の息吹を感じさせる自然の変化を記しています。
一候:芹乃栄(せりすなわちさかう)
小寒の始まりを告げる最初の候、「芹乃栄」は、寒さの中でも芹が勢いよく育つ様子を表しています。
芹について

- 和名:セリ(Oenanthe javanica)
- 特徴:水辺に自生する多年草
- 栄養:ビタミンA、B1、C、カロテンが豊富
- 旬:12月~2月
暮らしの中の芹
寒い季節に最もおいしくなる芹は、古くから日本人の食卓で重宝されてきました。

- 七草粥の材料として正月の風物詩
- おひたしや酢の物など、和食の定番
- 独特の香りと歯ごたえが特徴
- 胃腸を整える効能がある
二候:水泉動(しみずあたたかをふくむ))
「水泉動」は、凍てついた大地の下で、地下水が動き始める様子を表現しています。
自然現象としての水泉動

- 地中の温度変化による水脈の動き
- 湧水の活発化
- 地下水位の変動
生活との関わり
古来より、この時期の水の動きは人々の生活と密接に関わってきました。

- 井戸水の水量の変化
- 湧水を利用した産業への影響
- 地域の水文化の形成
三候:雉始雊(きじはじめてなく)
「雉始雊」は、キジが鳴き始める様子を表現しています。春はまだ遠いものの、生き物たちは確実に季節の移ろいを感じ取っています。
キジの生態と習性

- 学名:Phasianus versicolor
- 特徴:日本の国鳥
- 鳴き声:「ケーン、ケーン」という特徴的な声
- 生息環境:里山や農地周辺
日本文化におけるキジ
キジは日本の文化において、古くから重要な意味を持つ鳥として扱われてきました。

- 日本画や俳句のモチーフ
- キジの文様が入った着物や調度品
- 神話や伝説
- 伝統的な狩猟文化や郷土料理
まとめ
小寒の三候は、厳寒期にありながらも、確実に春へと向かう自然の営みを細やかに描写しています。芹の成長、地下水の動き、キジの鳴き声という三つの現象は、それぞれが寒さの中にも息づく生命の証であり、日本人の繊細な自然観察眼を今に伝えています。