大寒の期間には、以下の三つの七十二候(しちじゅうにこう)が含まれています。それぞれの候は、冬の終わりと春の訪れを告げる繊細な自然の変化を表現しています。
第一候:款冬華(ふきのはなさく)
期間:1月20日頃〜1月24日頃
寒風の吹きすさぶ中、雪の下から真っ先に顔を出すのが蕗の薹(フキノトウ)です。フキノトウはフキ(蕗)の花の蕾です。雪の下から力強く姿を見せる蕗の薹は、春の訪れを最初に告げる植物の一つとして古くから親しまれてきました。
生活との関わり

フキノトウ(蕗の薹)は、春の訪れを告げる山菜として重宝されています。
苦みのある独特の香りと味わいは、日本人の春の味覚の代表格です。
天ぷらや和え物などの伝統的な調理法のほか、古くから薬用植物としても利用されてきました。
第二候:水沢腹堅(さわみずこおりつめる)
期間:1月25日頃〜1月29日頃
渓流や沢の水が完全に凍りつく時期を表現しています。一年で最も寒さの厳しい時期であることを示しています。
自然界の変化

渓流や沢の水が氷結し、水底まで凍りつくほどの強い寒さが訪れます。
氷の層が最も厚くなる時期です。
生活との関わり

古来、この時期は特に防寒対策が重視され、寒中の水仕事を控える目安となりました。
一方、氷室での氷の貯蔵には適した時期とされました。
第三候:鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)
期間:1月30日頃〜2月3日頃
寒さの厳しい時期でも、鶏が卵を産み始めることを表現しています。生命の営みが続いていることを示す候です。
自然界の変化

日照時間が少しずつ長くなり始め、ニワトリが産卵を始めます。
生物の繁殖活動が徐々に活発になり始めます。
生活との関わり
- 養鶏において重要な時期とされてきました
- 卵の生産が増え始める時期の目安となります
- 生命力の象徴として、めでたい候とされています
七十二候から学ぶ自然の営み
これらの七十二候は、厳寒期における自然界の様子を詳細に観察し、記録したものです。現代の私たちに以下のような示唆を与えてくれます。
- 極寒期の自然の姿
- 厳しい寒さの中での生命の営み
- 自然界の休息と準備の時期
- 季節の移ろいの観察
- 微細な自然の変化への注目
- 気候と生物の関係性の理解
- 伝統的な知恵の継承
- 自然と調和した生活の知恵
- 季節に応じた暮らしの工夫
まとめ
大寒の七十二候は、一年で最も寒い時期における自然界の様子を、植物、水、動物それぞれの視点から描き出しています。フキの花の開花、沢水の凍結、そして鶏の産卵という、一見異なる現象を通じて、厳寒期における生命の営みの尊さを私たちに伝えてくれています。